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トランプが就任後ただちにやるであろうこと [2017年1月22日号]

*一部抜粋 (3)理想買いから現実買いに移るトランプ相場

当選後の初の記者会見で経済政策についてはほとんど触れなかった。これは記者から質問がなかったから触れなかったのであって、それについては非難すべきではないという見方もあるが、当のトランプ自身が選挙中にあれだけ主張したことは大統領就任後の理念として語るべきだったろう。

大統領就任後直ちに実行すると選挙中に表明してきた主な政策を列挙してみると次のようになるだろう。①TPPからの離脱、②NAFTAの再交渉または脱退、③中国を為替操作国に認定すると財務長官に指示、④エネルギー開発の規制撤廃、⑤インフラ案件の促進、⑥対外貿易に不正があればそれを特定しやめさせる、以上が主なものであろう。

 

①TPPからの離脱は我が国の与党が急いで成立させた案件に対して真っ向からこれを覆したことになる。TPPはアメリカが参加しなければ世界経済の40%を占める中国包囲網は成り立たない。我が国はトランプに梯子を外された。

②NAFTAの再交渉または脱退については対日貿易に決してプラスにはならない。

③中国を為替操作国に認定すると財務長官に指示するという件については、中国を「為替操作国」として名指しで認定しているが、ドル円の動きによっては日本に対してもそうなるかもわからない。

よく規制緩和と減税についてレーガン政権と比較されるが、レーガンも就任後「プラザ合意」で為替を当時約250円がらみから10年後に79円にまでさせ(これほど激烈な変動は先進大国にはなかったことだ)、不良債権山積みの、衰弱した日本経済の体質を益々弱め、「失われた13年」に拍車をかけることになった。愚かしかったのは、当時、筆者含めて国内全員が「円高が如何に日本を蝕むか」ということについての自覚がなかったことだ。それどころか大手証券は皆、「円高は強い国の象徴だ。円高=株高だ」、と言っていたし、当の竹下さんが円高有害説を気付かなかった。トランプがこれをやらないとは限らない。

⑥の「対外貿易に不正があればそれを特定しやめさせる」よう言う言い分については、我が国に対してもそれが及ばないとは限らない。

 

とにかくトランプ政権には不確実性が満ち満ちている。

「内向き」な保護主義の姿勢が目立ち、会見までは高かったドルも一転して売られた。そしてドル安→円高になった。一時118円付けたものが112円をのぞくまでにはなった。市場が嫌う保護主義的な政策を最初から前面に押し出すであろう。

1968年の年明け早々からジョンソン大統領の「年頭教書」で日本株は年明けから暴落で始まった。当時、それを察知した筆者らは正月休みに急遽、支店に集まったことを記憶している。(71年8月のニクソンショックの時も夏休みに高原にいた家族とともに急遽、会社にはせ参じた。)アメリカという国は昔からヒトサワガセな国だった。とにかく、アメリカ大統領の一言一句が筆者にとっては「事件」だったから未だに記憶から消えない。

2月に出るトランプ大統領の予算教書、3月に出る財政の限度額を決める議会と益々不確実性に満ちている。

 

【 図 3 】 2017年は「政治の年」に

20170122_週報_日経日程