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新たな大相場の中段か、中間反騰か [2016年12月11日号]

(5)再び、大相場の到来か、中間反騰か

 来年春には2万円超え、あるいは22,000円などという声が「トランプ相場」の後に出始めて今日なお盛んに言われている。トランプ氏の政策の実現性が確認されれば、米国株高が日本株高に波及する。合わせてドル高円安が続けば来年の春にかけて2万円を超える可能性がある、という。

日本株をドル換算して見た場合に割安感があり、大統領選の前日の値段ぐらいに該当する。原油価格も上昇する。1ドル110円、1ユーロ120円とすれば、今期の経常利益は0.7%増える。来期は輸出産業によって12.5%の増益を見込む。以上が強気の見解である。

 

これに対してトランプが正式に大統領に就任する来年1月20日以降は、変動の大きな相場が続くだろう。また米国の景気後退の恐れもある。過度な金利上昇が米景気を抑える可能性を否定は出来ない。トランプが掲げる法人税減税や財政出動は現実的には18年度以降になるであろう。従って17年3月から夏にかけては軽い景気減速局面に入るかもしれない。また、トランプの保護貿易主義「アメリカファースト」は「他国は二の次三の次だ」と意訳され、アメリカは孤立化する恐れもある。アメリカの孤立化は世界貿易の縮小として、世界全体に望ましくない。

 

また、組閣の問題が片付いた後、共和党のエスタブリッシュメントが政治経験のまったくない大統領と、同じく政治経験のまったくない財務長官と商務長官などとうまくやっていけるか否かという問題もある。

この3人とも事業家であるから、現実路線で折り合いをつけながら議会とうまくやっていける可能性が強いが、その場合に、選挙中に言ってきた数々のことは大幅に修正しなければならなくなろう。この大幅修正は、これを集票のためのセールストークと見ないで公約と見た有権者からの支持率を奪う。支持率が高いことが議会とうまくやっていける絶対条件である。

 

また、トランプの数々の暴言・発言等は、今後それをいくら修正してみても、アメリカの持つ「ソフトパワー」を大いに損傷した。アメリカは地球上の25%以上を占める経済力、地球上のおそらく80~90%を占める軍事力、このカネと暴力装置だけによって覇権国であったわけではない。自由・正義・民主主義等の社会的価値(市場で取り引きされる経済的価値とは別のもの)を発揮する「ソフトパワー」によって覇権国たり得てきた

トランプはそのソフトパワーを大きく損傷した。東西冷戦の間はそれなりの秩序があり、緊張があり、均衡がとれていた。東西冷戦がなくなった後、アメリカが覇権国として、あるいは世界のリーダーとしてソフトパワーを棄損した場合、しかも保護貿易を訴えて経済の縮小を訴えている場合、長期的に見てトランプ政権にはマイナス面も多い。

 

目先強気筋が言うのも、日経平均3万円という説は聞こえてこない。来春に2万円を超えるとか、21,000円とかいう程度である。これでは2月6月のWボトム14,866円から5割高にもならない。

失われた13年(90年から03年)の右肩下がりの5分の1にまで下がっていくプロセスでさえも財政出動によって一時的に60%以上の株高を演じたことが3回あった

2月・6月のWボトムから見て50%高ぐらいのものは本稿では大相場とは言わない。

 

現に「いざなぎ景気」においては、日経平均は2.5倍になった。

(1,020円→2,534円)

 

列島改造・過剰流動性バブルの相場では2.7倍になった。

(1971円→5,359円)

また昭和バブルの前段階では2.2倍になった。

(12,322円→26,640円)

 

平成バブルでは約2倍弱になった。

(21,036円→38,915円)

 

「郵政改革相場」では2.5倍になった。

(7,607円→18,261円)

 

アベノミクス相場では2.4倍になった。

(8,665円→20,952円)

 

このように本稿では2倍または2.5倍以上になるものを「大相場」と呼んできた。

3~5割高のことはいつでもあり得る、と呼んできた。

 

【 図8 】 過去の大相場

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